司法書士コラム

 認知症の父が高額な布団を買ってしまった...

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 私の留守中に、父が訪問販売で高額な布団を購入する契約をしてしまいました。父は認知症で、私が成年後見人に選任されていますが、何とかならないものでしょうか。

 認知症などの症状により、物事を正確に判断することができない状態にある者には、家庭裁判所で所定の申し立てをすることにより、成年後見人を選任してもらうことができます。成年後見人は、被後見人(本人)に代わって、被後見人の財産や権利を守るために選任されます。したがって被後見人が結ぶべき契約を成年後見人が代理して行うことができます。ご質問の場合、子が父(被後見人)の成年後見人に選任されているので、父のものを売ったり買ったりする契約を、子が代理して行うことになります。
 ところで、成年後見人が選任されていても、被後見人本人が、契約を結ぶことはできます。ですからこのケースでは、認知症の父と布団販売業者との契約は有効に成立しています。しかし、「被後見人の法律行為は、取り消すことができる」と民法第9条に規定されていますので、そもそもの売買契約を取り消し、なかったことにしてしまうことができるのです。
 この場合、成年後見人である子が、この売買契約を取り消す意思を、相手方である布団販売業者に伝えることになります。これによって、布団を買ったこと自体がなくなるわけですから、高額な代金を支払う義務もなくなります。もし、布団がもう手元にあるのであれば、その布団を返せばそれでおしまいです。
 但し、民法第9条には、日用品の購入については取り消しの対象外とされていますので、「歯ブラシ一本」買ったことを取り消す、といったことは難しいでしょう。

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